出産体験記
〜ラグビー部の夫がまさかのキャッチ

嘉麻市大隈在住 久子さん


平成20年7月3日、わが家の3人目の子どもとなる「匠海」が誕生しました。予定日の前日で2344グラムと小柄ですが、元気な男の子です。しかし、なんと予定外の自宅出産で産まれて来たのです!

 2人目妊娠の時からお世話になっている助産院に通院し、今回ももちろんそこで出産するつもりでした。しかし、妊娠中に母体の体重が増えず、胎児も小さかったので、2500グラムにならないと助産院では出産できないと言われました。周産期センターのある病院を紹介してもらい、そこに行こうかどうか検討しましたが、胎児は小さいだけで、いたって元気なので、できるだけおなかの中にとどめて成長を待とうということになりました。小さいながらも成長はしていて、予定日過ぎには2500グラムを超えるだろうということで、本来なら腹帯を外し、安産に向けて散歩や体操などをする時期に、腹帯をおなかの下に巻き、下がってこないように固定し、安静を心がけていました。

 7月2日の朝からなんとなくおなかがうずくような気がしました。まだ出てきたらいかんよ〜。このうずきは気のせいだ。と思う事にして読書などしていました。

しかし、夕方これはやっぱり!と思い直し、助産師さんに電話すると、「産まれるときは産まれるから腹帯をはずしましょう。」と言われ、職場へ向かっていた夫を呼び戻しました。15分間隔になったので、3人目だし、車に揺られているうちに陣痛が促進されるからと思い、夜8時くらいに上の子2人をおばあちゃんに預け、夫と2人助産院に向かいました。

 助産院には連絡してあったので、照明や音楽、アロマなど準備万端でした。しかし、それを見たら何だか陣痛が遠のいてしまったのです。もともと人に迷惑をかけず、ひっそり産みたい。という性格なので、この瞬間、助産師さんと夫の時間を奪っているな。と感じたのかもしれません。仕方がないので、一旦、家に帰ることにしました。家に帰るとさらに落ち着いてしまい、陣痛は遠ざかってしまったので、そのまま家で眠りました。夜中2時くらいから15分間隔くらいの陣痛が続き、痛みが増してきました。

5時過ぎに10分間隔になったので、そろそろかな?と思い、夫を起こしました。「ひげそってからでいい?」と言うので「いいよ。」と余裕で返事をしましたが、トイレに行こうとしたら一気に陣痛が強まり、もうだめ!という状態になり、2階の寝室から1階に降りると、一歩も動けなくなりました。夫は車を玄関近くまで出しに行きました。こんなときに1人にしないでくれ〜。という気持ちと、1人になったから産んでしまおう!(チャンス)という気持ちが入り混じり、どうせ助産院には間に合わないと思ったので産んでしまうことにしました(汗)。陣痛に合わせていきむと出てくるのが分かりました。夫が戻ってきたので、「もう出てきた」というと、慌てて様子を確認し、助産師さんに電話して状況を説明してくれました。「今、頭だけ出ていて、サランラップみたいなものに包まれていますが、破ったほうがいいですか?」・・・それを聞いて、「なんだ、まだ頭しか出ていないんだ」と思い、次の陣痛でもう1回いきむとするっと出てきてラグビー部の夫が見事にキャッチしました。

 すぐにおばあちゃんが呼ばれましたが、わたしと夫以外の家族は、わたし達が助産院からいったん帰ってきていたことを知りません。助産院に行くつもりでよそいきズボンに履き替えてかけつけたおばあちゃんは、羊水まみれの新生児を抱っこさせられ、夫の兄は産湯を沸かしていたお鍋を見て、「今朝の味噌汁は大きいなあ」と思ったそうです。長男、長女も起きてきて赤ちゃんと対面。「ちびヒロ〜(胎児ネーム)、かわいい〜。」とうれしそうでした。しばらくして助産師さんが「おめでとうございまーす。」とやってきて、胎盤処理などしてくれました。移動するのは負担がかかるからと結局自宅で床上げまで過ごしました。

 陣痛が一気に強まったときは、人生最大のピンチでしたが、無事に産まれてよかったです。産まれ方も母乳の飲み方も「匠の技」であり、そして7月3日は「波の日」なので「匠海」と名づけました。

 あれから2年半、匠海は大飯食らいのおもしろ2歳児に成長しました。

 


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