出産体験記
引っ込めて、、、

桂川町在住
一花さん


 その日は突然やってきた。

出産予定日を4日後に控え、今日が最後の健診になるかなぁ?なんて思いながら病院へ。内診前のモニター検査で赤ちゃんの心音を聞きながら、初対面の感動的なシーンを夢見ていた私。そこへ先生が飛んで来て「赤ちゃんの心音が弱く乱れているから、総合病院に搬送するよ。一緒に行くから心配ないよ」と。一気に現実に引き戻され、不安が胸をよぎる。

搬送先での内診の結果「胎児に異常は見られないが、もともと少なかった羊水がさらに減少していて、赤ちゃんが少し苦しいのかも知れないね。幸い赤ちゃんの体重も十分あるし、健康状態にも問題ないから、このまま入院して明日産みましょう」………そうして突然我が子と会える日が決まった。その日の夕方、陣痛を起こすためのバルーンを挿入。いよいよ明日、我が子に会える。駆け付けた母と主人に励まされ、ママとしての覚悟を決めた。よぉ〜し、頑張るぞぉ。

明朝6時。陣痛が始まる。初めは微弱な陣痛も、7時頃には激しく痛み、9時頃にはもう耐えきれず、息んでしまい助産師さんに止められる。次第に間隔も短くなり、5分置き、3分置きに襲ってくる陣痛とは裏腹に、子宮はなかなか開かず、破水もしない。それから2時間くらいののち破水するも、子宮の開きが小さく、まだ息まないでと言われる。しかし、痛みと共に息んでしまう。私はもう我慢出来ず「もう無理!もう無理!」と子どものように連呼。大人な言動が出来る状態ではなかった。見兼ねた先生が、まだ子宮の開きが足りないけど産みましょうと言ってくれた。やったぁ〜!やっと産める、会える、解放される、よしっ!!頑張らなきゃ!でも、ここからが本当の試練だった。

息んでも息んでも赤ちゃんが出てこない。陣痛促進剤を打っても痛みだけが増し、息む力も時間と共に弱くなり、本当にもう駄目だと心が折れてしまいそうになる。助産師さんが何度も「髪の毛が見えてるよ。頑張って。」と励ましてくれる。だけど息み続けて4時間弱、一向に出てくる感じがしない。

「もう無理、もうこれ以上頑張れん、お願いやき赤っちゃん引っ込めて、お腹切って〜」

と私が懇願すると、

「何言いようと!赤ちゃん引っ込められるはずなかろう!頑張らんね!」

と先生に怒られる。でも負けずに「だってもう無理!早くお腹切って出して〜」と叫び返す。こんなに辛いなんて、私はもうママになれないかも………時間の経過が気力と体力を消耗させていく。同時にママの言葉が聞こえたかのように、せっかく見えていた赤ちゃんの頭も引っ込んでいく。

先生の提案により、午後3時半頃吸引機の使用を決断。しかしこの吸引機の挿入が想像を絶する痛みで、さらに病院中に響き渡る叫び声をあげてしまった。そうして3度目の息みと共に、我が子はママのもとへ出てきてくれた。長時間に渡る息みと吸引機のせいで、初めて目にした我が子の頭は見事にとんがっていた。そのせいで、初めてかけた言葉が「ごめんねぇ〜」だったことは、今思い返しても笑ってしまう思い出となった。

あれから1年と4ヶ月。分娩室に駆け付けてくれたパパと身内のみんなに愛され、来斗はすくすくと成長してくれている。

来斗、パパとママのところへ産まれて来てくれて本当にありがとう。


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